金色の眼の猫 物語形式 [バイ]
本書はフランス語の入門過程に当たるCD付きの語学本だ。
NHKラジオ「フランス語講座」(入門編)の『金色の眼の猫』を編集したものだが、書店で見る機会は少ないかもしれない。
もしフランス語を勉強したいが今の方法が合っていないと感じたらこちらの教材を試してみると良い。
語学書は時に砂を噛むような味気なさがある。
そういった場合何らかの工夫が必要とされる。
1課毎にある場面を設定するというものもあるが、本書は、ストーリー形式になっており、それが1つの物語として最後まで続いている。
ストーリー形式といえば、『ボトムアップ式 映画英語のリスニング』がある。
これは英語のリスニングに絞った教材で、ニューヨークの刑事物語となっている。
本書は、日本人の少女マヤの物語である。
フランスで神父からもらった金色の眼の猫ぺピートが加わるの冒険物語である。
と、このように書いていると物語を想起するので、その効果はある。
あぁ、そういえばショコラがいいと言っていたな、と。
難を言えば手に入りにくいことか。
それからこれは飽くまでも入門書で中級者のものではない。
他の言語で同様の試みがあるのは、『ドクトル・ダリウスの事件簿』か。
⇒ 金色の眼の猫
ラテン語のしくみ 言葉のしくみシリーズ [バイ]
白水社の言葉のしくみシリーズは26冊出ているようだ。
言葉のしくみシリーズは、2005年、白水社創立90周年記念出版として出されている。
ということはもう直き100年。また本が出るのか。。。
白水社といえばフランス語なのだが、この会社の名前の由来は中国の古典からだ。神保町の有名な書店は直ぐに分かるだろう。欧米人を観察したり人から聞いたりすると「省」の文字は合わない社会のようだ。
白水社、アテネフランセ、日仏学院。。。
フランス語のお決まりのもの
さて、語学書でシリーズものがあると別の言語の学習がしやすいという利点がある。
気に入った方式又は自分に合ったやり方であれば他の言葉でもそれで出来るから便利とも言える。
語学で応用ということに関してはピーター・フランクルが『ピーター流外国語習得術』で書いているが、ヨーロッパの言語に関してはスラブ系、ラテン系、ゲルマン系のそれぞれの言語を若いうちに一つ習得しておくと後で同系統の言語を学ぶ時に楽だという。
これは言語レベルの話だが、学習書の方式でもシリーズ物で自分にあったものならば使えそうだ。一通り学習したら別の言語でも方式や構成は同じようなものなので比較的楽できる。
もちろん語学自体が楽とはいわないが。
ラテン語学習ではよく暗記せよという人がいる。何でもかんでも暗記は難しいかもしれないが、このシリーズは例文は100くらいなので一度チャレンジしてみるのもいいだろう。
発音自体も難しくはなく、他国の人間は逆に大分自国流を通しているようだ。特に英語ネイティブ。ネットでラテン語を聞いてみればそれなりの癖というものが分かる。本書では日本語ネイティブでも大丈夫というか利点を書いていた。
ということで難しいことは気にせずに学べる本といえる。ただしこれは入門書なのでやはり本格的に学習するとなればどの言語も難しいということになるが。
そういえばクリスマスシーズンだ。
教会で歌を歌うという人に誘われた事がある。ラテン語が聞けると少し興味を持ったが結局行かなかった。教会ラテン語だしという言い訳を自分にして。向こうは音楽には興味があってもラテン語、語学には興味が無さそうだった。高学歴貧乏だった彼は今頃どうしているのだろうか。
第2部第5章の【日本の中のラテン語】に挙げている例文を実際に見に行くのも語学の楽しみになるのかもしれない。聖地巡礼なのか?
暗記か理解かという論争には興味が無いが、一度声を出して覚えるということを実践するには良い教材だと思う。
買っといてもいいかな。買った方がいいかも。買ってしまった。手放せない。
ということでおススメする。
⇒ ラテン語のしくみ
『神田昌典の英語の近道』 社会人のための語学本 [バイ]
白地のにピンク色の帯の本は、ある営業マンが書いた本という程度の認識なら間違っている。
見た目はもしかしたら下品かもしれないし、更に本文の語り口は軽妙だ。語学に見識とか教養の言葉が付随してしまう思考だと拒否反応が起きるかもしれない。その見識なり教養がどういったものを想定しているのかはわからないが。
構成としては、自分が関わる商品に誘導するような部分が一つあり、もう一つは彼の家族の物語でもある。上手く詰め込めなかった感がある。更に、英語学習に関して、本質的な部分のための長い説明とビジネスの観点からの学習テクニックが後半に用意されている。
こう書いてきて、おすすめでない様に聞こえるかもしれないが、実は買いである。
捨てることのすすめを説いている本である。
日常会話、これは実は難しいのだ。大統領の通訳をやった元外務省の役人である著者も床屋でのヘアカットの英語は難しい。これを捨てる。
著者は大量のリング式単語カードで単語を増強した。これも捨てる。
文法的に正しく話すことは、実は他人を観察していればわかるが、母国語である日本語でも間違う。これも捨てる。
ペラペラしゃべること。これも捨てる。
トラウマになったであろう著者の中学での音読時のきれいな英語の発音。これも捨てる。
では、何をすべきか?
英語は日本では学校で基本的なことは教育されてきたので細かいことはやらない。学校を出て社会人になれば何かしら業務経験を積むことになる。これプラス英語を考える。
78ページに答えはある。お金と時間が必要だとは千野栄一の師の言葉であるが、社会人は78ページにあるものを得るためには多少のお金が必要かもしれない。
これは社会人のための英語習得法だ。
⇒ 『神田昌典の英語の近道』
ボトムアップ式 映画英語のリスニング 音変化 [バイ]
この本は英語のストーリー仕立てになっているリスニング教材である。
非常に良い本であるが、ある期間これに集中して体得するというくらいの心構えが要る本だ。それが無ければ初めから手に取らない方が良い。
語学教材は時として無機質になる嫌いがある。それを避ける工夫として物語仕立てにする手法があるが、一般の入門書でこれを実行するとネイティブから表現がおかしいと指摘される場合もある。習っていないことを避けつつ文を作っていかなくてはならない苦労がある。
この本はそういった特定の語学の初心者向けではなく、英語のリスニング、それもより細かい音を聴き取る力を要請するために作られた本である。音変化に注目してそれらを1つずつ拾い上げていくという感じで根気のいるものである。
そういった細かい作業が必要となり且つ量もそれなりにある。また実用書であり、習得、体得するのが目的となるべきで、読んで多少知識を得たというのでは折角の良書が無駄になるというものだ。
基本的に聞き取りであり、発音訓練の本ではない。が、やはり聞こえれば発音も楽になる筈であり、もしみっちり学ぶのであれば無駄にならない本である。
何の本でもそうだが、レベルというものがあり、必要ない人もいる。それは英語でのプレゼンのスキルだったり、新規事業についてであったりするかもしれない。また、突然来月出張とかしばらく駐在とかだったりするかもしれない。時期的な優先順位の問題もある。
ただ一方、雑にせず少しずつ改善していきたいという考えの人もいる。この場合、英語の音声の聞き取りに関してはこの本は良く出来ている。ただし、パラパラめくって何となく知識を拾って終わりといった使い方の本ではなく、できるようになるという自分の体に変化を起こすための本である。
口の形や舌をある程度動かせるようになれば他の言語の学習も楽になる。つまり文字を追って読んだだけというのではなく、多少でも体に染み込ませている状態だ。
映画英語のリスニングというタイトルだが、この場合音変化に光りを当てたものである。テレビドラマや映画を教材とした本で良くあるものとしてスラングの解説がある。念のためだが、本書にはよくある表現はでてくるが、言葉自体に注目したものではないのでこれで映画英語が字幕無しで完璧というわけではない。これは日本語でも起こることなので当然だろう。
ということで、手に取る前にこの本のための時間を確保してから購入すべきだ。
⇒ 『ボトムアップ式 映画英語のリスニング 新装版―NewYork Detective Story』
『世界中の言語を楽しく学ぶ』 共通文法カテゴリーと耳通し [バイ]
ただの民間のサラリーマンが書いた語学本、というわけではない。
言語学科卒業という履歴を持ち、仕事も語学とは全く関係ないというわけでは無く、校閲者という言葉に敏感な立場の人間だ。
語学教師でもなく、職業としての語学の専門家でもなく、サラリーマンが必要として語学をやっているのでもなく、かといって趣味だけでもないという微妙な立ち位置にいる。趣味のものを敢えて実用にする必要は無いかもしれないが、校閲者でなくても筆者なら仮に別の職業であっても語学を上手く仕事に活かしたのではないかと思える。
『世界中の言語を楽しく学ぶ』というタイトルから分かるように、多言語学習のヒントが詰まった本である。そしてこれは読んだ方が良い語学本でもある。
全6章ある。
多言語学習者に対するこの本の最大の贈り物となるものは「共通文法カテゴリー」だろう。
本書の82ページでは、忘れてもそれを見ればすぐに思い出すにはということで、それには「文法の共通語」を作って、各言語の文法をそれに翻訳して行くというものだ。
162ページにはその「共通文法カテゴリー」の具体例が出ている。これは筆者なりのものであり、個人個人で違って来る物だ。
忘れても、可能な限り早く思い出す、と同時に新しい言語の概要を見て行く場合にも使えるものだ。
共通文法カテゴリーは筆者の使う術語のようなものであり、そのようなものが存在しているわけでもなく、ヨーロッパ言語の文法を改変したようなものと取る向きもあるかもしれないが、これは方便であり実用を旨としたものだ。これ以上は長くなるので説明はしないが、学習者自身が学びやすくするためのものとして提示しており、見本も見せている。後は自分で作り上げるのみだ。
「共通文法カテゴリー」とあるように、文法のことを書いているので音声は軽視しているかというとさにあらず。「耳通し」と筆者が名付けているものがある。78ページでは、学習した言語の音や基本的表現を耳と頭に染み込ませる訓練、と定義している。
また、コラムとして様々な言語に言及している。
その他細かいテクニックが満載となっている。東京の通勤電車という狭い空間の中で磨かれたテクニックがコンパクトな新書に詰まっている。
この本は多言語学習に興味がある人にはおススメの本である。
⇒ 世界中の言語を楽しく学ぶ
『語学で身を立てる』 ビジネスとしての語学、一つの欧州言語としての英語 [バイ]
この本を読むと英語学習では実は学校では文法がしっかり教えられていないのではという疑念が湧き起こる。文法ばかりでは駄目だもっと会話練習を、というのは間違いということになる。会話練習以前に文法が果たして適切に教えられていたのかということだ。また、いつの間にか英語が外国語としての基本であるとの観念が植え付けられていたのに気づく。
又英語が言語の基本であるかのように振る舞うネイティブの語学講師=英語の講師に遭遇する理由も同じであろう。それは日本だけの現象ではなく世界的なもののようだ。英語はあくまでもヨーロッパの言語の一種でありその中ではどちらかといえば特殊な言語である。そういう認識が必要だ。
よって英語が言語、外国語の基本という強調された或はうっすらと植え付けられた観念からの離脱と同時に、基本に帰って昔学校で習った英文法をもう一度見直しましょうということの危険性も分かる。英語は外国語の基本、学校で習った英文法は英語やその他の外国語を習う際の文法の基本という偏見をそぎ落とす。米国の変調がありながらも英語の使用は増加しているという時期にもう一度見直すには良い本だ。
この『語学で身を立てる』の著者は、一見個性が強いようで実際のところ言語の研究に関しては時流に流されない論を展開している。一方、ビジネスとしての語学はこれとは反対である。というのも著者自身が経営者であるので説得力もある。それも一般対象ではなく専門家育成のためのコンテンツがある機関といった趣である。本書は2003年出版ということで時流といった部分に多少の変化はあるかもしれない。ただし長期的なスパンでのカテゴリ分けになっているため今現在流行っている言語について書かれた雑誌系とは趣を異にする。
語学の専門家としてであって、自分の仕事でのスキルに加えて語学というようなものではない。ただし語学講師がおススメする勉強法といったものではなくビジネスの観点からそして英語中心でないところから書かれているので役に立つ部分はある。
ということで、この本はおススメです。
⇒ 語学で身を立てる