華麗なるインド系文字 [ホールド]
書体字典のようなものとしてノリで買ってしまったが殆ど使っていない。
眺めるだけである。
「インド系文字について」の章のサブタイトルが「この本の楽しみ方」となっているのでそれでいいのだろう。
アジアの17種類の文字を集めたものだ。
主に南アジア、東南アジアで使われているほとんどの文字はブラーフミー文字に起源をたどれる同系統の文字ということである。
あとがきの著者の言葉によれば本書は「糊と鋏」でこしらえたものである。
どうでもいいことだが、本書は白水社から出ている。
語学本なので白水社だが一方でフランス本のイメージが強いと変な感じがする。
本は赤に黄色の帯だ。
これがインド系文字の世界なのだろう。
白っぽい本だったら確かに白水社/フランスのイメージだが逆に違和感を感じるかもしれない。
本フェチではないが、こういったのも重要なのだろう。
文字文化圏という言葉を使い、アラビア系文字文化圏、インド系文字文化圏、漢字系文字文化圏と概念図として分けている。その中のインド系文字文化圏を扱っている。
そして本書ではインド系文字を取り扱っている。
現代の言語学への不満も書かれており、言葉には言語の世界と文字の世界があるという。言語の世界と文字の世界というより音声の世界と文字の世界の方がいいような気がするが。
9ページに図式化されているが、現代の言語学を築き上げたのは主に欧米人でありラテン系文字を当たり前のものとする教養的土壌を共有している。アメリカ人がコンピュータの研究を進めていた当初からラテン文字での処理しか念頭に置いていなかった。
このように音声の方に偏っており文字もラテン文字中心で発展してきたのが現代の言語学だという。
確かにインド系文字を扱う者にとってはそう感じてもおかしくはないだろう。
本書はインド系文字の祖としてブラーフミー文字があり、それ以外の16種類の文字の字体をリスト化している。
ブラーフミー、
梵字、
デーヴァナーガリー、グルムキー、グジャラーティー、ベンガル、オリヤー、
シンハラ、チベット、
ビルマ、ラオ、タイ、クメール、
テルグ、カンナダ、マラヤーラム、タミル、
がリスト化されている。
167ページから文字豆知識つまみ食いには、リストの順にデーヴァナーガリー文字からタミル文字まであり、加えてグランタ文字、ターナ文字の解説とインターネットでインド系文字の項がある。
モルディヴのターナ文字はアジアの文字ではあるがやはり別系統として扱われている。
こういう文字の世界というのは、古代に興味のある者だったり語学マニアだったり字体・書体・フォントというものに興味があったりするところからのアクセスがあるのだろう。
著者はインド系文字だけでなく世界の文字とか古代の文字といった括りで本を出している。
ネットの発達で語学書の意味も変わっていたが手元にあると何か違うと感じさせるものだ。
⇒ 華麗なるインド系文字