ナマった英語のリスニング 米国で収録された様々なアクセント [ホールド]
学習するという目的では買う必要はない本かと思う。
リスニング力向上+教材の真似をして上手くなるといった方式の教材ではない。
それでも買ってしまうのは趣味である。
言語学を学んでいる人はひょっとしたら得るものがあるかもしれない。
どちらかというと他人の発音の分析をするためのもので、専門分野への入り口にあるような本だ。
ジャパンタイムズの本で、類書としては特定の国に絞った「LIVE from シリーズ」がある。
アメリカ合衆国で録られたものに、『On the Streets of America アメリカ英語方言のリスニング』がある。
本書は米カリフォルニアで収録されたものだ。
収録されている英語を分類すると、米語、米語以外(イギリス英語、オーストラリア英語)、移民の英語の3種となる。本書では2部に分けられていて、英語圏のアクセントと英語圏以外のアクセントという構成になっている。全部で15のアクセントとなり、巻末に対訳が載っている。
目次
Chapter 1 英語圏のアクセント
1. ボストン・アクセント
2. ニューヨーク・アクセント(ブルックリン)
3. ニューヨーク・アクセント(バッファロー)
4. シカゴ・アクセント
5. ニューオリンズ・アクセント
6. カリフォルニア・アクセント
7. ブリテッシュ・アクセント
8. オーストラリア・アクセント
Chapter 2 英語圏以外のアクセント
9. スペイン語アクセント
10. ドイツ語アクセント
11. ロシア語アクセント
12. ブルガリア語アクセント
13. ペルシア語アクセント
14. ヒンディー語アクセント
15. 韓国語アクセント
Feature 日本語アクセント
Transcription
本書は、『On the Streets of America アメリカ英語方言のリスニング』に比べるとインパクトは少ないかもしれない。アクセントとはいっても、カリフォルニアに住んでいて角が取れてきたりしている。
『アメリカ英語方言のリスニング』には、合衆国中西部のシカゴと西部のカリフォルニアのアクセントが無いが、本書に収録されているので音声を聞くことができる。
本書の中で読み応えのあるものはアクセント解説だ。
大体はある国から来た人の発音の特徴や米国特定地域のアクセントの特徴だが、これはというものがあった。
p.30
でも不思議なことに、トムのアクセントは南部よりもむしろブルックリンのものとよく似ており、Chapter 2 に挙げた特徴のほとんどがトムの話し方にあてはまります。
これはなぜでしょうか。19世紀に東海岸に押し寄せた移民の波がニューオリンズにも及び、アイルランド・ドイツ・オランダ等からの移民が市内に労働者地域を形成したので、そこでブルックリン・アクセントに似た話し方が出来上がったのです。その地域の移民が後に郊外のジェファーソン・パリッシュに移った折り、特徴ある話し方も一緒にもって行きました。トムはそれをしっかりと受け継いでいます。米国での地域アクセントが、様々な歴史的民族的背景に影響されて細かいモザイク模様になっている、ということを如実に示すよい例です。
ここまでくると、教科書で習ったパターンがあるのか、分析を重ねた結果なのか分からない。地理的特徴という横軸に歴史的人口移動という縦軸を重ね合わせたものとなっている。
この分析が瞬時に出来ればホームズも裸足で逃げ出すだろう。
聞いて言っていることが分かるのと分析するのとは全然違うということだ。
英語の細かい部分に拘りたいという人にはちょっとした楽しみの本である。また少し分析的に音声を聞いてみたいという入門書的な本である。
⇒ ナマった英語のリスニング